2015年04月02日

公正さが求められる研究者の姿勢

医薬と健康増進の分野でさまざまな研究が進んで、研究成果として論文が発表されています。これらの研究結果は、人々の健康に大きく影響を与えます。また、これらの研究は公的な資金で賄われるケースが多く、当然ながら特定の利害関係で研究結果が左右されることがあってはなりません。

2008年3月に厚生労働省は、『厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest:COI)の管理に関する指針』を定めています。目的は、公的研究である厚生労働科学研究の公正性、信頼性を確保するためには、利害関係が想定される企業等との関わり(利益相反)について適正に対応する必要があると、指針の冒頭に書かれています。

利害関係のあるものが研究者に金銭を渡すことがあったら、その研究結果は疑われかねないからです。この指針で示されている個人としての利益相反(COI) とは、『外部との経済的な利益関係等によって、公的研究で必要とされる公正かつ適正な判断が損なわれる、又は損なわれるのではないかと第三者から懸念が表明されかねない事態』を言います。以下、ポイントを抜粋します。

公正かつ適正な判断が妨げられた状態としては、データの改ざん、特定企業の優遇、研究を中止すべきであるのに継続する等の状態が考えられる。

責務相反とは、兼業活動により複数の職務遂行責任が存在することにより、本務における判断が損なわれたり、本務を怠った状態になっている、又はそのような状態にあると第三者から懸念が表明されかねない事態をいう。

「経済的な利益関係」とは、研究者が、自分が所属し研究を実施する機関以外の機関との間で給与等を受け取るなどの関係を持つことをいう。

「給与等」には、給与の他にサービス対価(コンサルタント料、謝金等)、産学連携活動に係る受入れ(受託研究、技術研修、客員研究員・ポストドクトラルフェローの受入れ、研究助成金受入れ、依頼試験・分析、機器の提供等)、株式等(株式、株式買入れ選択権(ストックオプション)等)、及び知的所有権(特許、著作権及び当該権利からのロイヤリティ等)を含むが、それらに限定はされず、何らかの金銭的価値を持つものはこれに含まれる。


そうしたことからこの指針は、意欲ある研究者が安心して研究に取り組めるよう環境を整備する趣旨で策定するものであり、以下の原則を定めています。

・研究をバイアスから保護すること。
・法律問題ではなく、社会的規範による問題提起となることに留意し、個人情報の保護を図りつつ、透明性の確保を管理の基本とすること。
・客観性、公平性を損なうという印象を社会に与えることがないように管理を行うこと。


原文:『厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest:COI)の管理に関する指針



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Posted by acplan at 15:16│Comments(0)学術発表
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